コラム・エッセイ
No.34 身辺整理中です
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子思い切って、本棚の整理をした。いちばん目につくのは、全国各地から来る、私家判詩集だ。もっとも、最近は少なくなったが…。それらを処分したら、本棚に透き間が出来た。
処分出来ない本もある。そのひとつに1967年発行の『原色現代新百科事典・全8巻』がある。今も大活躍中だ。この雑文を書くのに、不明なこと、知識不足を補うため、重い事典を、うんこらしょっと引っぱり出して調べる。
「古いねえースマホがあるじゃないの」
言うなかれ、事典・辞書で調べるのが好きなのだ。辞書は『広辞苑・第4版・岩波書店』の卓上版で、息子からのプレゼントだ。何年か前、確か、7版が出たが、食指は動かなかった。今さら、新しい言葉使いも必要なく、いや、その意欲もない。美人薄命の限度年齢は98歳と決めている。そのうち、天国、いや、地獄に落ちるだろう。
只今、私が身辺整理しているのは、アルバムだ。ケチな性分だから、どさっ、ばさっとは処分できない。
子供の頃の写真はたった1枚しかない。健康優良児になったそうで、ぷっくりの頬と、太い足で踏んばっている写真だ。今も大切に持っている。
高校生の頃まで、写真は珍しく、隅っこにちょこんと写っていたら買い求め、アルバム帳へ貼っていた。
やがて、誰でもがカメラを持つようになり写真の量も増え、整理が追いつかず、菓子箱等に投げ入れ、押入れの奥で眠ったままだ。
今、それらを引っ張り出して、縦横に切り裂き、市指定のごみ袋の底へ敷き詰め、その上に台所等から出たごみを投げ入れている。もう、2カ月を過ぎたが、写真は半分も処分出来ていない。
初めの頃は、写真1枚1枚、矯めつ眇めつ思い出と照らし合わせたりして、未練たっぷりにごみ袋に投げ入れていた。
今は、2、3枚重ねた写真を容赦なく、力いっぱい引き裂いて、投げ込んでいる。
その昔、豪華客船でまわる旅が出来た。処女航海のクイーン・メリー号に、仲良し4人組で乗船して、北欧を旅をした。生まれてはじめての贅沢旅行で、味づいた4人組は、その後も、何度か船旅をしたものだ。只今、その時の写真を破棄中である。
「ああ、この写真はミコノス島、丘の上の風車、よかったなあ」
「あれ?これはどこの風景かなあ?」
40数年来、おつきあいのあるひとが「走れ、おばさんは痴呆症よ」と、言っているそうだ。
痴呆症かも知れんが、未だ、写真整理は出来る。
