コラム・エッセイ
No.41 遠い昔の…話(5)
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子子供の頃から本を読むのが好きだった。小学5年になって、念願の図書部へ入部した。当時、図書部の先生は私が住んでいた集落より、更に30分以上奥の小畑という村から通っておられた。
図書部の仕事(?)は、本の貸し出しの外、整頓や先生の指導で、本の破れなど修理した。
土曜日には「5冊貸すよ、仕事のご褒美だ」と、おっしゃって下さり、同じ本好きのUさんと大喜びしたもんだ。
話は飛ぶが、決して早熟ではなかったと思うが、何処へ行く時も本は離さなかった。
町唯一の大正座という劇場で、時々、映画鑑賞会があった。そんな時も本は持参した。ある時、担任の先生が「何の本読んでるの」と聞かれて、お見せした。先生は驚いて、隣の先生に言われた。
「まあ、この子、モーパッサンの『女の一生』を読んでいるわ。あなた、内容がわかるのかしら」
「はい、わかります」私はすまして答えた。本に飢えていた私は、本ならなんでもよく、手当たり次第、乱読していたのだ。
話を小学5年の時に戻ろう。その頃、何かで“デート”という言葉を知った。意味はわからないが、秘密めいた匂いがした。辞書をひいたかどうか覚えがない。
今回、改めて、愛読書広辞苑で調べた。デート①日付、時日②日時や場所を定めて、異性と会うこと。またその約束とあった。
5年生の私は、デートという言葉が使ってみたくてしょうがないのだが、いつ、どこで、誰に使ったらよいのかわからなかった。
ところが、ある日、思いついたのだ。
「おばあちゃんに使ってみよう」
私と弟を育ててくれた祖父母は、明治生まれだが、当時には珍しい大恋愛結婚であったようだ。誰に聞いたのかも忘れたが、なんとなく知っていた。
祖父の家は、集落でも素封家だったようだ。対して、祖母は隣村の貧乏百姓で子沢山の家であった。そうだ。祖母は○○小町と言われるほどの美人であった。金持ちの遊び人であったろう祖父(私の想像)は、祖母と駆け落ちしたそうだが、その後、許されて結婚した。
祖父母の行動を知るよしもなかったが、それならきっと2人はデートしたに違いない。
祖父母の在所に、神上神社がある。その昔、神功皇后が西征の時、山から4匹の熊が降りてきて、お迎えしたという。山は四熊ケ岳だ。
「おばあちゃん、神上神社でおじいちゃんとデートしたの」
祖母は顔色をかえて私を睨んだ。
