2026年05月29日(金)

コラム・エッセイ

No.57 石田実和〜時は過ぎ〜コンサートより

美人薄命 走れ!おばさん 中村光子

 3月20日(日)スターピアくだまつの展示ホールで、オペラ歌手石田実和さんのコンサートがあった。実和さんは下松在住の画家、石田ひろ子さんのお嬢さんである。

 北海道に住まわれる岡元敦司・石田実和夫妻は、イタリア留学を終えて日本に帰国してから毎年、北海道、東京、山口でコンサートを開いていらっしゃる。それは2003年から始まった。

 この2年間は、コロナ禍で中止になり、大切な忘れ物をしたようで、私は寂しい。

 母上の画家、石田ひろ子さんのフアンである私は、実和さんの第1回のコンサートに行き、張りのある歌声の虜(とりこ)となり、感激のあまり“追っかけ”になり、昂(こう)じてチケット売りおばさんとなり、今日に至っている。

 今回、実和さんはひとりで下松に帰郷、いわゆる里帰りだ。どのような経緯で“石田実和が贈るsoprano concerto”になったのか、知るよしもないが、音楽好きの友人たちに声をかけ、誘い合わせて出かけた。

 一倉宏・上田知華・兼松衆によって手がけられた、現代訳引用の歌曲集「枕草子」の、楽譜集から成る…美しさ・をかしさ(可愛らしさの意)、季節のうつろいなど、千年以上の時を超え、新たな装い…(コンサート・パンフレットより抜粋)とあった。

 音楽に、全く無知の私だが、自分流に置きかえてみて…。

 どの時代を生きたとしても、人間の本当の生き方や考え方は、普遍だ、と解釈した。

 夜をこめて鳥の空音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ

 これは清少納言の百人一首に入っている歌だ。清少納言がお仕えしたのは、一条天皇の中宮・定子(ていし)で、清少納言より11歳年下であった。一条天皇は定子より更に3歳年下であった。その時代の婚姻では、珍しいことではなかった。

 さて、コンサートは徳山の高橋正実さんの華麗で優しいピアノ伴奏に合わせ、実和さんの押えて歌う声が、会場に静かに流れた。

 何度も言うが、私は無知でこれを書いているので忸怩(じくじ)たるものがある。が、あえて言わせて戴くなら、語り調の耳にやさしい、幅の広い奥行き…は耳にやさしかったのである。

 アンコールとして、ベートーベンの“月光”の中から“宇宙の深い神秘”を歌われた。高音域から低音域に移行する、高低差の声に息をのむ聴衆、高らかに歌いあげる実和さん…。

 会場は静まりかえりやがて割れんばかりの拍手する皆の頬は輝きあふれた。

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