2026年05月29日(金)

コラム・エッセイ

No.60 3人…寄れば

美人薄命 走れ!おばさん 中村光子

 高校1年の時、同じクラスだった3人は、時々我が家に集まり昼食会をする。もちろん、持ち寄り会だ。

 そのひとりO女史は今も太極拳の講師だ。もうひとりK女史を、私はツアーコンダクターと呼んでいる。旅行する時はすべて彼女におまかせ…おっと、彼女の夫君マアちゃん(ナイショだが、彼が旅慣れていて、世界各国に詳しい)に、計画を立ててもらっている。

 これまで4人で何度か海外旅行をしている。無芸大食の私は、3人の後をひょこひょこ追う…だけだ。

 話が横道にそれた。コロナ禍で自粛していた昼食会を久し振りにした。会わなかった分だけ話が弾む。うれし楽しの会話から、やがてお決まりコースの愚痴話になるのは仕方ない。

 O女史、口火を切る。

 「ねえ、聞いてよ。冬のことだけど、夫が湯たんぽ用意してくれるのはいいけど、夕方早くだから寝る頃はさめているのよ。それを注意したら、お湯を全て流してしまったのよ。もう少し考えて欲しいと思うんよね」

 「あら、湯たんぽを用意とはうらやましい。我が家は夫は2階、私は階下で寝るの。お互い、何時に寝たか知らないの。用事を頼んでも知らん振り、話相手にもなってくれないのよっ。あっ、そのお魚おいしいでしょ。おふたりに食べさせたくて、朝から調理したのよ。ね、おいしい?」

 K女史は、目を細めて食べているO女史と私を、じイと観察する。

 「あのね」

 話したい私に、やっと番がまわってきた。

 「あのさ、さっきの続きなんだけどね、あれ?私、何の話をしていたのだったっけ?」

 トホホ、何の話をするのだったのか、全く思い出せなーい。

 晩期高齢者の部に突入した3人は、ひとの話に耳を傾ける余裕など、さらさらなく、つまり聞く耳を持たず、相手が息継ぎする合間をねらって割り込もうとしている…のだ。

 そうこうしている間に、時間はたちまちの内に過ぎ去ってしまう。

 「ああ、楽しかったわねえ、やっぱり、定期的に集まらないと寂しいわね。早く、コロナが終結してくれないかなあー。困ったものよね。又、お会いしましょうね」

 と、お開きになる。

 不完全燃焼の私は、夕方所用でやってきた友人をつかまえて、うっぷんを晴らそうとした。ところが、ところが、彼女も私の顔を見るなり言った。

 「聞いて欲しいわ、お隣の奥方、いい匂いがするけれど今晩のおかず?」

 ああ、いづこも同じ秋の夕暮れ、あっ違った、春の夕暮れ…だ。

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