コラム・エッセイ
No.60 3人…寄れば
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子高校1年の時、同じクラスだった3人は、時々我が家に集まり昼食会をする。もちろん、持ち寄り会だ。
そのひとりO女史は今も太極拳の講師だ。もうひとりK女史を、私はツアーコンダクターと呼んでいる。旅行する時はすべて彼女におまかせ…おっと、彼女の夫君マアちゃん(ナイショだが、彼が旅慣れていて、世界各国に詳しい)に、計画を立ててもらっている。
これまで4人で何度か海外旅行をしている。無芸大食の私は、3人の後をひょこひょこ追う…だけだ。
話が横道にそれた。コロナ禍で自粛していた昼食会を久し振りにした。会わなかった分だけ話が弾む。うれし楽しの会話から、やがてお決まりコースの愚痴話になるのは仕方ない。
O女史、口火を切る。
「ねえ、聞いてよ。冬のことだけど、夫が湯たんぽ用意してくれるのはいいけど、夕方早くだから寝る頃はさめているのよ。それを注意したら、お湯を全て流してしまったのよ。もう少し考えて欲しいと思うんよね」
「あら、湯たんぽを用意とはうらやましい。我が家は夫は2階、私は階下で寝るの。お互い、何時に寝たか知らないの。用事を頼んでも知らん振り、話相手にもなってくれないのよっ。あっ、そのお魚おいしいでしょ。おふたりに食べさせたくて、朝から調理したのよ。ね、おいしい?」
K女史は、目を細めて食べているO女史と私を、じイと観察する。
「あのね」
話したい私に、やっと番がまわってきた。
「あのさ、さっきの続きなんだけどね、あれ?私、何の話をしていたのだったっけ?」
トホホ、何の話をするのだったのか、全く思い出せなーい。
晩期高齢者の部に突入した3人は、ひとの話に耳を傾ける余裕など、さらさらなく、つまり聞く耳を持たず、相手が息継ぎする合間をねらって割り込もうとしている…のだ。
そうこうしている間に、時間はたちまちの内に過ぎ去ってしまう。
「ああ、楽しかったわねえ、やっぱり、定期的に集まらないと寂しいわね。早く、コロナが終結してくれないかなあー。困ったものよね。又、お会いしましょうね」
と、お開きになる。
不完全燃焼の私は、夕方所用でやってきた友人をつかまえて、うっぷんを晴らそうとした。ところが、ところが、彼女も私の顔を見るなり言った。
「聞いて欲しいわ、お隣の奥方、いい匂いがするけれど今晩のおかず?」
ああ、いづこも同じ秋の夕暮れ、あっ違った、春の夕暮れ…だ。
