コラム・エッセイ
No.44 今年のクリスマスの過ごし方
美人薄命 走れ!おばさん 中村光子オペラコンサートへのお誘いです。柄にもなく、オペラ歌手、岡元敦司・石田実和夫妻の追っかけをしている。今回で早や十五回目のコンサートだ。
夫妻は岡元さんの故郷、北海道を拠点に音楽活動をされている。奥方のソプラノ歌手、石田実和さんは下松市出身だ。私は数十年前、彼女の母上である、画家、石田ひろ子さんの個展会場にふらりと立ち寄り、石田さんと友達になった。
それから数年後、岡元・石田夫妻の第一回目のコンサートを聴きに行き、追っかけになった。さらに、チケット売りに変身したのである。
十二月二十五日、夫妻の“クリスマス・ディナーコンサート”がホテル・サンルート徳山で開催される。(会費一万千円=ドリンク、食事つき・午後六時半開演)
舞台は設定されるが、あまり役に立たない。ふたりは各テーブルの間を縫うように歩きながら、神の声かとまがう声量で体躯(たいく)を筒状にし、時に高らかと、時にやさしく、時に喜びを、時に悲しみを歌われる。聴衆はその声に聴き入り、時にご馳走にはしをつけるのを忘れてしまう。
へへへ、岡元さんは私と目が合うと、語りかけるように歌われる。天にも昇るとは、こういうのを言うのか。
岡元さんは誰にでも語りかけられるとは限らない。私の場合、美人だから、岡元さんは語りかけずにはおられないのだ…と想像する。
いやいや、これは私の傲慢(ごうまん)であった。もし、仮に目が合ったとしたら、それは「スミマセン、チケットノシンパイヲシテイタダイテ」という、私への労わりだろう。だって、私はチケット売りだから…。
伴奏受け持ちの作曲家、西澤健一氏のことも書きたい。彼はこのコンサートの度に、いつも東京から鈍行を乗り継いで来徳される。ヘエーと意外に思うひともあるだろうが、私はとても尊敬する。
楽曲を創るひとは、非日常時間が必要なのだ。こういう時間を持つことで素晴らしい曲が生まれるのであろう。
とはいえ、真似が出来るか、と言われると少し疑問だ。過日、気の置けない友達と東北を旅した。最後の日、五能線の鈍行に乗り、夕日を見ることにしていたが、あいにくの雨で取りやめた。残念に思うが、友達と一緒だから鈍行でもいいのだ。
奇しくもクリスマスと重なってしまった。家族や友人との楽しい企画のあるひとは良い。私のように寂しいクリスマスを送るひとは、自分へのご褒美として、ご一緒にオペラを聴きませんか。
ただし、ご夫妻の虜になっても、私は責任は負いません。
