2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

又 長月(一)

随想 季節の中で 西﨑博史(周南文化協会会長)

 初秋9月。日中は暑さがまだ厳しいですが、朝夕は幾分しのぎやすくなりました。7日は「白露」。草に降りた露が白く見える頃です。
 
 夕焼 小焼の 赤とんぼ
 負われて見たのは いつの日か

 三木露風作詞、山田耕筰作曲の「赤蜻蛉」は昭和2年(1927)から歌い継がれてきました。童謡の中でも名曲中の名曲。赤とんぼが空を飛ぶ様子は秋の風情たっぷりで秋の季語として有名です。

 赤とんぼは赤いとんぼの総称。身近で見かけるのはトンボ科アカネ属のアキアカネという種類です。6月頃に平地で羽化した後、涼しい山地に移動して夏を過ごし、秋風が吹き始めるとまた平地に降りてきて秋を知らせます。秋にかけて成熟して真っ赤になることから赤とんぼと呼ばれて親しまれてきました。産卵を終える11月頃まで田畑の上を飛び回っています。

 私が小学生を過ごした昭和30年代はまだ木造家屋が多くて、家のまわりは田畑が広がっていました。夏休みには塩辛とんぼや麦わらとんぼを追って走り回り、大きな銀やんまは子どもたちの人気でした。秋が忍び寄ると赤とんぼが飛び始め、群れをなして飛ぶ姿に圧倒されることもありました。害虫を捕食するので農家にとっては益虫。ありがたい存在で神さまのお使いだと言う人もいました。

 山の畑の 桑の実を 小籠に摘んだは まぼろしか

 懐かしい童謡「赤蜻蛉」。口ずさむとあの日がよみがえります。

 暑い、暑いと挨拶を交わしながらも夜になるとひんやりした空気が流れます。南から東から風が吹き抜けて虫の音を聴きながら秋の訪れを実感します。

 あれ、まつむしが鳴いている
 チンチロチンチロチンチロリン

 あれ、すずむしも鳴きだして
 リンリンリンリンリーンリン
 ‥‥

 明治43年(1910)の文部省唱歌「虫のこえ」。今は小学校2年の歌唱の共通教材になっています。こおろぎ、くつわむしなど虫たちの合唱に耳を傾けながら秋の夜長を楽しみます。

 白玉の歯にしみとほる秋の夜の
 酒はしづかに飲むべかりけれ

 宮崎に生まれた漂泊の歌人、若山牧水。明治43年秋の信州の旅で詠んだ一首。「虫のこえ」が世に出た年です。魂の酒の歌に自然と杯を重ねます。

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