コラム・エッセイ
生誕100年林忠彦展
翠流▼周南市美術博物館の生誕100年林忠彦展を見た。林は徳山出身。林写真館の跡継ぎだったが、飛び出して日本を代表する写真家と言われるようになった。
▼生まれは大正7年(1918)。プロデビューは昭和15年(40)。戦中は報道写真を撮り、中国大陸の北京で終戦を迎えて徳山に引き揚げ、間もなく東京に出た。亡くなったのは平成2年(90)、72歳だった。展覧会名に「林忠彦の世界 それは“昭和〟だった」の言葉が付されている。その言葉通り、戦前、戦中、戦後と昭和を生き切った。
▼会場の正面に置かれているのが、織田作之助、太宰治、坂口安吾の写真。いずれも昭和21年(46)の撮影。人物写真の代表作、「日本の作家」の先駆けであり、戦後の風俗などを撮影したカストリ時代の一部と見ることもできる。
▼会場では人物写真に目が行く。「日本の作家」「日本の画家」「日本の家元」、そして「昭和のスターたち」。王貞治、岸恵子、石原慎太郎・裕次郎兄弟、池内淳子、有馬稲子、市川染五郎らが並ぶ。
▼その間にある「小説のふるさと」は晩年に打ち込んだ風景写真につながるのかもしれない。「若い人」の函館、「二十四の瞳」の小豆島を取材した作品が展示されている。
▼「昭和」を撮影したのは林の意図ではない。100歳までも存命であれば「平成」も撮影を続けたであろう。その平成もあと数カ月で終わる。昭和に育ち、平成を生きた世代には懐かしく、甘ささえ感じる写真展。24日まで開催している。
(延安)
