コラム・エッセイ
がんの治療と仕事
翠流▼徳山東ロータリークラブと周南記念病院が下松市で開いた市民健康講座の講師は下関市教育長の児玉典彦さん。16年前、宇部市の中学の教頭時代に下喉頭(かいんとう)がんが見つかり、声帯などを切除して声を失ったが、1年後に教壇に復帰した体験を話した。
▼がんを宣告された時、まずこのことを誰にも話さず、治療も受けず、働き続けようという考えが浮かんだ。次は教員を続けられるよう声帯を残せる放射線治療を受けようと考えたが、娘の「生きていて」という一声で再発の可能性が最も低い手術を選択したという。
▼半年の入院などの闘病を経て職場復帰。講演では「生きる喜び」として「成長する喜び」「困難を乗り越える喜び」「誰かのために頑張る喜び」を挙げていた。それは児玉さん自身がつかんだ喜びでもある。
▼先日、がんになった労働者の3分の1が退職せざるを得ない中、治療と仕事を両立させるモデル就業規則を厚生労働省が作成したという記事が大手新聞の1面に出ていた。
▼2人に1人ががんになると言われている。70歳まで働き続けられる環境を整えようという動きもある。治療を受けながら働きたい労働者はこれからも増えると見込まれる。
▼「治療と仕事の両立支援」は国などにとって欠かせない施策。山口県でも病院のがん相談支援センターを窓口に山口産業保健総合支援センターが支援に取り組んでいる。児玉さんの体験が特別なことではなくなり、多くのがん患者が「生きる喜び」を感じられる日が来てほしい。
(延安)
