コラム・エッセイ
巨大な椅子
翠流▼古今東西を問わず、人は大きなものにあこがれる。山口市の山口ゆめ花博でも花で埋め尽くされた花の谷ゾーンや日本一高い木のブランコ、高さ4メートルのわらアートや巨大な砂山が楽しませている。
▼これらに負けない、それ以上の衝撃を受けたのが周南市三丘の徳修館裏の高台に出現した巨大な木製の椅子。座板まで4メートル、背もたれの先端までだと地上から6メートルもある。まずこの大きさに引きつけられる。
▼建てられている場所がまたいい。県指定文化財で郷校跡の徳修館や島田川などを見下ろす高台。この椅子にひかれて高台に上った人はこの景観にも魅せられそうだ。
▼一方、ふもとから見ると徳修館やその前にある孔子像とともに視野に入る。現代アートを思わせる巨大椅子と藩制時代の遺構、それに大思想家、孔子。これが同じ空間にある。
▼さらに注目されるのが、現代アートの作家ではなく、地域づくりに取り組む住民の中からこの椅子の建設が発案され、補助金も獲得して実現してしまったこと。
▼この土地は以前、熊毛北高の運動場だったが、同校が移転したあと荒れ果てていた。それを切り開いて広場にし、巨大椅子の材料は三丘小の学校林のヒノキで、地域の大切な素材ばかり。
▼今も「物見やぐら」と呼ばれており、最初は中世の砦(とりで)のようなものをイメージしていたかもしれない。しかし、出来上がったのは巨大な椅子。見るたびに最近、少なくなった“愉快さ”を覚えずにおれない。 (延安)
