コラム・エッセイ
舞台「たからモノ」
翠流▼人間魚雷「回天」の搭乗員とその家族などを描いた舞台「たからモノ」が14日、周南市文化会館大ホールをほぼ満席にして大成功のうちに幕が下りた。
▼この公演のエグゼクティブプロデューサーで俳優の若林哲行さん(71)に初めて会ったのは3月。6月にけいこを始めるが、この芝居のために集まって作られる一座で、公演の日程は決まっているが、地元での協力もこれから呼びかけるという話だった。
▼大丈夫だろうか、大変だろうなと思いつつ、その熱意に押し切られて新周南新聞社も協賛した。今回の公演の成功をもたらしたのは若林さんと周南市出身のもう1人のプロデューサー、手島昭一さん(45)の、回天と縁の深い、この周南の地の人に見てほしいという強い思い。それが2人と出会った地元の人たちや、集まったスタッフ、俳優たちを動かした。
▼俳優たちは平成生まれも多いが、70数年前のあの時に戻り、懸命に演じていることが伝わってきた。青春を謳歌(おうか)し、夢や恋について語り合う場面。懐かしさを感じさせ、あのころに戻りたいと思わせる。しかし、彼らの多くは懐かしむことは許されなかった。間もなく、軍隊に入り、大切な人を守るため命を捧げることになるのだから。
▼軍人ばかりではない。空襲を受けた庶民も、芝居には登場しないが、回天の攻撃目標の艦船に乗っていた米国の兵士も死んでいく。戦争が一人々々の大切なものを奪っていく。広く全国で上演されてほしい芝居だと思った。
(延安)
