コラム・エッセイ
火点頃
翠流▼困っている市民への対応は時には拙速であってもいい。周南市の新庁舎の市民課で、一部の窓口で書類が見えにくい状態になっていたが、蛍光灯型LEDの照度を調整して、見えるようになった。
▼その過程で、この窓口やロビーの記載台にスタンドが置かれた。市などに提出する書類には小さい文字で説明が書かれているものも少なくない。一方で高齢者も増え、書類が見えにくいと感じる市民も多くなっている。スタンドの設置で以前よりはるかに説明が読みやすくなった。助かっている人も多いのではないだろうか。
▼小さな例だが、これが「安心」だと思う。新庁舎がオープンしたが、市民が求めているのは地震になっても壊れない庁舎だけではない。市民に寄り添う心配り、安全なだけでなく安心な都市を目指す心意気を持った職員だ。
▼21日の毎日新聞の「季語刻々」で、俳人の坪内稔典さんが「火点頃」という言葉を取り上げ、明かりをともす夕暮れを表すこの言葉は過去の言葉になったと書いていた。
▼新庁舎も自然光を生かしてはいるが、昼夜、季節を問わず照明や空調装置を使う。今はまだ、職員が座る机の下には段ボール箱が並び、ロビーなどには手書きの案内も掲げられている。先日、各部署の表示は廊下に突き出す形にしたほうが見えやすいという意見も市民から聞いた。改善すべき点は多い。
▼新庁舎を使いこなし、利便性だけでなく、文化・芸術の香りや、何よりも人の温かみを加えるのは職員。これからに期待したい。
(延安)
