2026年10月07日(水)

コラム・エッセイ

徳山藩最後の藩主

翠流

▼周南市美術博物館の徳山の歴史特設コーナーで「徳山藩最後の藩主 毛利元蕃(もとみつ)とその時代」が始まった。明治維新150年に合わせた企画だが、もっと積極的に情報を発信できないものだろうか。

▼展示品は多くはない。元蕃(1816―84年)の肖像画と書、印章数点、詩文集「省耕集」のほかは年表などパネルだけだ。書は父の広鎮の米寿を祝って1864年(元治元)に書かれた。この年は7月に禁門の変、8月に英、仏、米、蘭の4カ国と戦った下関戦争があった。

▼11月には禁門の変の責任をとって元蕃の兄の福原元僴ら3家老が自刃した。展示の解説でも「9月に米寿を迎えた広鎮の胸中は複雑であったと思われます」と書かれている。広鎮だけでなく、長州全体がどう動くべきか、揺れていた時期だ。

▼その中で徳山藩では7月から翌年1月にかけ、正義派と俗論派の対立から正義派の7人が刑死、暗殺される殉難七士の事件があった。波乱の中だからこそ、父親の米寿を祝い、平静を保とうとしたのだろうか。さまざまに推測できる。

▼省耕集は1850年(嘉永3)にまとめられたが、これはペリー来航の3年前。江戸幕府の昌平学の教授だった安積艮斎が序文を書いている。安積は殉難七士の本城清やその弟の江村彦之進が学んだ学者。本城清は元蕃からも目をかけられていた。江戸の学者と徳山藩のきずなの強さもうかがえる。

▼多くの歴史ファンに見てほしいこの企画。これを生かさない手はない。

(延安)

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