2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

「斎藤清の世界」展

翠流

▼久々に心洗われるような気持ちになった。周南市美術博物館で開かれている生誕110年、没後20年となる版画家、斎藤清の作品展を訪れての感想だ。

▼斎藤清(1907―97)は故郷の福島県の会津から4歳で北海道に移り、看板店を営んでいたが、絵画の勉強のため二24歳で上京。1951年にサンパウロ・ビエンナーレで在サンパウロ日本人賞を受賞、日本人の版画が世界で評価される先駆けとなった。

▼今回の「斎藤清の世界」展はほぼ制作年代順に展示され、30年代初期から版画家としての評価が確立したあとも常に「先端」を目指してさまざまな表現を追求した軌跡が172点の作品で紹介されている。代表作「会津の冬」など故郷の風景、仏像など京都の寺院、猫や女性などを描いたモダンな作品も並ぶ。

▼このうち147点が川端町の山下内科医院院長、山下武右さんの所蔵品。患者さんの癒やしになるような版画を探していて斎藤の作品と出会ったという。245点のコレクションから美術博物館が選び、解説も付け、160ぺージもある図録も編集・発行した。コレクターと学芸員の共同作業でこの展覧会は生まれた。

▼優れた作品であればあるほど、たくさんの人の目に触れることで影響が広がり、その価値が増す。画家志望だった斎藤が版画を始めたのも、銀座で安井曽太郎の作品を見たことがきっかけだったという。

▼同館オリジナルのこの展覧会を観覧できる喜びは大きい。山下さんと同館に感謝したい。

(延安)

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