コラム・エッセイ
「家族の気持ちを」 軟部肉腫の転移で入院(上)
翠流▼6日から21日までの16日間、福岡市南区の九州がんセンターに入院してきた。病名は両側転移性肺腫瘍。2009年に太ももにできた腫瘍を下松市内の病院で切除したが、まもなくがんの軟部肉腫だったことがわかり、同センターで患部の周囲を追加切除した。同センターに通って経過観察を続けていたが、3月3日、1年ぶりに訪れた同センターでのCT(コンピューター断層撮影)検査で左右の肺に1カ所ずつ、腫瘍が見つかった。
▼大きさは右側が直径0.5センチ、左側は1センチほど。1年前のCTの画像と比べると確かに大きくなっており、切除することになった。それから検査のため13、15、17日と同センターに通い、4月6日に入院、13日に手術を受けて左右の肺の腫瘍とその周囲を胸腔鏡手術で切り取った。小さな穴を3カ所ずつ、計6カ所に開けて器具を体の中に入れる手術。手術のあと、体の表面に残ったのは、この6カ所の、最大のものでも5センチほどの傷口だけだった。
▼肉腫は肺や胃、大腸など臓器以外にできる悪性の腫瘍。放置すれば転移する。しかし患者は少ないらしく、骨肉腫やユーイング肉腫は聞いたことがあったが、軟部肉腫は自分がなって初めて知った病名だった。
▼手術などで転移の可能性を小さくできるが、100%とはいかず、私の場合は七年半を経て転移と診断された。09年の発病も、今回の転移もまさに青天の霹靂(へきれき)。しかし、いつかはという思いもあったのか、前回よりは気持ちも落ち込まずにすんだ。
▼「家族の気持ちを」は「病む人の気持ちを」とともに同センターの基本理念にあることば。勝手な解釈だが、家族は患者を支えると同時に社会的にも気持ちの上でも患者とともに病むことになりがち。患者はもちろんだが、家族の気持ちを尊重することが、よりよいがん治療とつながると考えられる。
▼がんは日本人の2人に1人がなり、3人に1人ががんで死亡していると言われているが、治療方法も進歩している。早期発見、早期治療によって再発せず、再発しても長生きする人も多い。体の治療だけでなく、気持ちのあり方や仕事の継続など社会との関わりといった体以外のケアの必要性も言われるようになて対策もとられている。
▼それでも私の場合は職場の理解があり、手術だけで抗がん剤治療などなく、退院直後から仕事にも戻れたが、治療が長期間で後遺症が大きいことに、職場、家庭などの事情が重なればと考えると課題は大きい。
▼退院の日、同センターから博多駅に向かうバスの中で、若い男性が1万円の両替えを運転手に依頼したが、手持ちの現金がないらしく、運転手は乗客に「1万円札を両替えできる人はいませんか」と呼び掛け、すぐに年配の紳士が財布を開いて応じた。
▼この街は困った時には助け合える温かさがあると思うと同時に、運転手がすぐに乗客に呼び掛ける姿から、助け合いが当たり前になっていることが伝わってきた。がんや医療に限らず、社会のさまざまな場で困難に直面している人に対し、思いやりを発揮できる雰囲気や仕組みづくりを進めてほしいし、進めたいと思う。(延安)
