コラム・エッセイ
「お大事に」軟部肉腫の転移で入院(下)
翠流▼7年前に太ももにできて切除した軟部肉腫が肺に転移し、その切除手術のため福岡市の九州がんセンターに6日から21日まで入院した。入院中、リハビリテーション室や患者のための図書室などでお世話になったセンターの職員から必ず掛けられたのが「お大事に」の言葉だった。体をいたわり、早く回復をという意味だが、命や人生を大切にしてほしいと言われているように感じた。
▼がんは治療法も進歩し、患者の身体的、心理的苦痛をなるべく少なくする緩和ケアも積極的に導入されつつある。その成果で長期間、発病前と変わらぬ生活を送ることができる場合も多いが、一方で死に至ることもまだ少なくない。そのため、命がどんなに大切なものなのかに気づかされたり、残りの人生をどう生きるのか、考える機会になることもある。
▼私の場合、心房細動(不整脈)があり、血栓ができて脳梗塞になるのを防ぐため、血液をさらさらにする薬を常用しているが、手術前にはこの薬の調整が必要で、手術の1週間前に入院した。そのため16日間と、手術だけの場合より入院期間が長くなった。
▼入院翌日から退院する前々日まで24時間、点滴が続いてセンター内を歩き回ることもままならず、退院したらあれをしたい、これもやりたいと思い描いて過ごすことが多かった。一方で、手術の日以外は体力を維持するために歩いたり、自転車こぎなどのリハビリがあった。その際には大きな手術後なのか、家に戻るためリハビリに励む患者を目にした。
▼そんな患者を支える医師や看護師をはじめとした職員。交代勤務ではあろうが、24時間、患者とともにがんと闘う姿勢に頼もしさを感じた。
▼しかしこの姿勢は医療関係者だけではない。警察官や消防士、消防団員、自衛隊員、福祉関係者をはじめ、大震災など特別な事態での働きや殉職時を除いては注目されることは少ないが、献身的に、時には命がけで仕事をしている人が身近にもたくさんいることに改めて気づかされる。
▼もう一つ、あって良かったと思ったのが健康保険制度。手術となれば3割負担でも数10万円の負担になるが、入院費の窓口での支払い額が高額医療費の自己限度額となる限度額適用認定証をあらかじめ準備したことから、支払った入院料は7万円余りだった。この制度は支払ったあと還付を受けることもできる。ただ、全国健康保険協会(協会けんぽ)など保険者に申請しなければ利用できないらしい。
▼手術後の経過は順調で、肺の機能の低下や今回見つかったところ以外には転移もないという。多くの人と制度に支えられて過ごした16日間。人生のリセットとまではいかないが、もう一度、新鮮な気持ちで仕事に取り組むなど、生活を見直す機会として「大事に」したい。(延安)
