コラム・エッセイ
林忠彦賞受賞記念展
翠流▼周南市美術博物館で有元伸也さんの第26回林忠彦賞「TOKYO CIRCULATION」の受賞記念写真展が開かれている。東京の新宿駅周辺でフィルムを使って10年がかりで撮影したモノクロームの人物や風景。会場に入って林が70年前、東京で撮影して戦後の出発点となった、闇市など終戦間もないころの風俗などに取材した「カストリ時代」を思い出した。
▼林賞は「社会は心を撃つ写真をさがしています」のキャッチフレーズを掲げて林の精神を受け継ぎ、乗り越える写真家の発掘を目指しているが、今回もそれにふさわしい力作が選ばれた。
▼作品は人物だけのものもあるが、多くは背景も写し込まれている。一作品ずつにタイトルはない。会場は一点ずつ熱心に見る人ばかり。作品から伝わってくる被写体と自分の人生を重ねているのだろうか。どんな人なのかと想像を膨らませているかもしれない。あるいは自分と関係のない異空間の表現ととらえているのかもしれない。
▼タバコを手にした人を写した作品もあった。必ず声を掛けて撮影したというから、そのタイミングを見計らい、一息入れてタバコを吸う時を狙って接触する、その声が聞こえてきそうに感じた。
▼同展は6月4日まで。会期中は2階の新収蔵品展が開かれているコレクション展示室、「茶室」シリーズを展示中の林忠彦記念室、まど・みちお、徳山の歴史のコーナーの常設展示室も無料。初夏に芸術をゆっくりと楽しみたい。 (延安)
