2026年07月12日(日)

コラム・エッセイ

ホタル見物と洒落ました

晩期高齢者のたわごと 中村光子(周南市有楽町)

 S夫妻より長穂地区主催のホタル祭りに誘われた。コロナ禍は下火になったが、外出を控えていたから喜んでお供をした。

 家を出る時は、雨の降る気配も感じなかったのに、会場へ着く頃には小糠雨(こぬかあめ)になった。洋服が濡れるほどの雨ではないから、持ち合わせていた透明のビニール袋を頭にかぶって歩いた。

 会場へ入り、まず驚いたのは、会場の広さと芋を洗うほどの人出だ。仮設舞台では生演奏に合わせて、女性歌手が透き通る声で歌い、周りを取り巻く子供たちはリズムに合わせて軽やかに踊る。

 家に閉じこもりうつうつとしていた私は、すべてが新鮮で呆け顔で聞き入った。「会場には無料提供の食糧が沢山用意してある」と聞いていたが、我々が会場に入った時には、すべてなくなっていた。残念!

 うどん、天ぷら、ソフトクリーム、ビール等々の出店が軒を連ねていた。どのコーナーも長蛇の列で、最後尾がわからないほどだ。老若男女は静かに立ち並び、順番を待っている。そのマナーの良さに言葉もない。

 S氏がやっとのことで手に入れた肉うどんだが、どこも満席で座る所がない。美味しい肉うどんの匂いに勝てず、立ったまま、つるつるつると頬張りましたあー。

 見物用のホタルのいる場所も長蛇の列だ。諦めて、道筋にぶら下がっているホタルカゴをのぞくが、何も見えない。その内ゴマ粒程のホタルが、それも1匹、かすかに光を放った。私は嬉しくて「ヒカッター」と、大声を出し、あわてて口を押えた。

 雨が大降りにならぬ内に帰ろうと、廃校の駐車場へ急いだ。会場から離れた所にある駐車場近くでホタルが乱舞しているではないか。これぞ、本当のホタル見物だと、S女史と手をたたいて喜び合った。

 駐車場までの道筋は暗かったが、道の角々には誘導係が立っておられ、行き帰りの見物人をやさしく誘導されている。思いがけない親切に「ありがとうございます」と頭を下げた。隅々まで行き届いた警備に、長穂地区のおもてなしの心をいただいた。

 帰宅後、ゆったりお湯にひたって考えた。無料配布の品々に与からず、肉うどんも立ち食いのお行儀の悪さ、肝心の会場ホタルにも会えなかったが、気分は豊かであった。

 不眠症気味の私は、時々、入眠剤を服用するが、その日は飲まず、久し振りに壮快な朝を迎えた。そんな些細なことがうれしい今日このごろです。

絵・杉川 茂

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