2026年07月08日(水)

コラム・エッセイ

第三十三手「囲碁のこれから①」

「碁」for it 小野慎吾

 囲碁界は、人工知能(AI)が人間より強くなってから色々な事が変わっています。

 まず、大きく違うようになったのは練習方法です。囲碁は自分自身だけで練習するのは難しいゲームです。AIが誕生する前は、本での勉強、対人戦・ネット対戦等で練習をし、その中から本に書いてある事、師匠が言う事を参考に、自分の中で囲碁の考え方を落とし込む方法が主でした。

 まず本での練習ですが、昔の本に書いてある囲碁の定石の評価を、AIが評価した場合に結果が逆になっている事はざらにあります。そのため、筆者は自分が子供の頃に良いとされていた陣形が、逆に悪かったなどと評されると、身に沁みついた陣形を手放すという事は非常に難しいです。これはどの囲碁愛好家もそうでしょう。

 昔は師匠から「この形は、黒の方が良い。」などと指導して頂く事で強くなってきました。ですが、師匠側もおいそれと、どちらの方が良いと指導する事が出来なくなってきました。現代の練習方法では、AIを使用した練習が、囲碁愛好家でも多くされています。初心者の方でもその方法は多いと聞きます。その際はネットなどを通して練習をして、囲碁の実力は熱心な方なら上がります。

 ですが、その方法では一つ上手くならない点があります。それは実際に人と対面で打つ場合です。実際に実力が上がっており、勝負には勝つかもしれません。しかし、実際の囲碁は勝ち負けを決める際に対戦相手同士で領土を数え合います。これを囲碁の専門用語で「整地」と言います。

 筆者も全国大会で自分より一回り以上下の選手と打った事は多くありますが、この整地が出来ない選手を一回見かけた事があります。ゲームが終わり残すは整地だけになりましたが、その選手は整地をしませんでした。理由を他の方が聞くと、ネットとAIだけで勉強してきたため、パソコンでは囲碁のゲームが終わると自動でパソコンが計算をしてくれるため、対面対局で必要な整地作業がありません。

 その対局は審判の方が整地作業をされ、その選手が勝ちました。この整地は、囲碁を始めるとかなり初期の段階で覚えるルールです。これが必要なしで、強くなった選手を間近で初めて見て驚いたのを覚えています。今後はAIを師匠として実際に対面対局をしないまま、囲碁のプロ棋士になる方が出てくるのではないかと考えます。

 筆者は、いい事でもあるとは思っていますが、囲碁で学べる要素の一つが無くなるとも思っています。囲碁は、対戦相手と二人で作り上げていくゲームです。囲碁のルールで打った石は動かせませんが、実際に対局しているとひじ、手などが当たり囲碁の盤面が崩れるなどは日常茶飯事です。整地作業でも、相手の地を数えるというルールのため、相手の地との境目が分からなくなり、対戦相手と協議をしなければなりません。

 コミュニケーションとして「でも自分はこうだったと思う・自分が間違っていました。」など意思表示をする機会は思ったよりあります。それが真の学びの機会だと思っています。

 意思表示をして「碁」for it(頑張る)!

女の子の靴を履かしてあげるお兄さん

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