コラム・エッセイ
第百三十七手「囲碁の練習方法の様変わり」
「碁」for it 小野慎吾囲碁の練習方法は2年前の当コラム八十二手目で紹介しました。改めて囲碁の練習方法について考えてみたいと思います。
2年前のコラムでは囲碁の練習方法は大きく分けて3つと評しましたが、今は4つと考えています。
1つ目は「棋譜並べ」です。棋譜並べは囲碁のプロ棋士等が、対局した棋譜(記録)を実際に囲碁盤で順番通りに石を置いていき学んでいく練習方法です。特に序盤はプロの対局では同じ形が出やすい傾向があり、棋譜並べを繰り返す事で序盤の正しいフォームを自然と覚える事が出来ます。棋譜並べは普遍的な練習でしたが、練習対象の棋譜が囲碁AIに置き換わっている点があります。
人間最高峰の棋譜よりも囲碁AIの棋譜の方がレベルは高く、今後は囲碁AIの棋譜を模倣するというのは少しずつ増えてくると思います。
2つ目は「詰碁」です。詰碁は将棋でいう王を詰める問題「詰将棋」と同じ練習方法になります。正解手順がほぼ一つしかない問題に対して最善手を打ち、最後はどのような結論(囲碁の場合は生か死か)になるかを自分自身で判断する練習です。とても地味な練習方法ですが詰碁が得意な選手ほど勝率がいい傾向があります。詰碁は普遍的なもので、江戸時代から現代まで問題の結論は変わりません。囲碁AIの影響を全く受けていない唯一の練習方法です。
3つ目は「定石を覚える」です。囲碁は初手から選択肢が多いゲームですが、序盤は「定石」を駆使して展開をして行きます。沢山覚えて定石から何が一番効果的かを自身で判断して使い分けて行きます。定石数は約3千以上と言われています。定石は普遍的ではなく、時代に合わせて改良されたり、なくなったりしています。新しい定石は囲碁AIが出るまでは人間が作り上げて来ましたが、今では新しい定石はほぼ囲碁AIからの発信となっています。時代に合わせて囲碁の打ち手は定石を更新して行く必要があります。
最後の4つ目は「対局」です。囲碁は最終的には対局を楽しむゲームです。棋譜並べ、詰碁、定石を覚える練習を実戦投入して行き、勝利出来るかを確かめます。逆に言うと「対局」から棋譜並べ・詰碁・定石を覚えるという全てが練習できます。数多く対局をこなせば、おのずと囲碁がうまくなっていく道理です。対局は、現代ではインターネットで気軽に対戦が出来るため、自身の教室ではそれ以外の練習を重点的にするようにしています。
そして、今や囲碁AIは囲碁の高段者の練習において欠かせないものになりつつあります。囲碁AIは、最善手は教えてくれますがその理由は教えてくれません。その理由を紐解いて行き、それを説明するのが人間の楽しみであると思っています。囲碁AIは最善手の理由を言語化出来るように改良されている最中だそうです。楽しみである一方、人間の楽しむ領域が減っていくのは寂しさも感じます。

囲碁AIの画面(青色が最善手)
