2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(41)ジョウビタキ

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 「カッカッ」どこからか鳥の鳴き声が聞こえてきた。その独特な鳴き声は、火をおこす時に使う火打石を打ちつける音に似ていることから「火焚き(ひたき)」が名前の由来になったというジョウビタキに違いない。

 またジョウは、オスの頭部の色が高齢の男性の白髪と似ていることから「尉(じょう)」と付けられたとされている。その二つを合わせてみると、高齢者としては親しみが感じられる「白髪の老人が火を焚く」となる。

 同じぐらいの大きさでスズメとよく似ているが、背中にある白い模様で違いが簡単にわかる。スズメのように群れることがなく単独行動をする。そのため、縄張り意識が強く、見た目に反して攻撃的なところがある。

 そして、何よりもジョウビタキが好まれるのは、人なっこいところであろう。人をあまり恐れることなく近くによって来る。もしかすると、人間すらも縄張りに入ったことで監視の対象となっているのかもしれないが。

 さらに、忘れてはならないのは、ジョウビタキが冬を日本で過ごす渡り鳥ということである。最近では渡りをしないものもいると言われているが、ほとんどのジョウビタキは中国やチベットからやってきたと思われる。

 渡りができるほどの能力を持ちながら自慢することもなく、何食わぬ顔でお辞儀をして尾羽を振るわせている。その飾ることのない謙虚さに、頭が下がる思いがする。そんなジョウビタキに聞きたいことが多くある。

 いったいどこの場所から誰とどのようにして飛んできたのか、どのような理由があって渡りをしているのか、渡りの時期や方法について誰に教わったのか、渡りの道中にどんな苦労や楽しみがあったのか、などである。

 ジョウビタキの寿命は4~5年と言われている。縄張り意識が強いことから、今年来ている鳥は昨年も来ていたと言えるであろう。鳥の瞳に、白髪の老人が顔見知りとして映っているとしたら、これ以上の喜びはない。

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