2026年05月01日(金)

コラム・エッセイ

(84)水の泡

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 「ゆく河のながれは絶えずして、しかももとの水にあらず」鴨長明の有名な『方丈記』の冒頭の一節である。そして、「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」と続く。

 「よどみ」とは水の流れがとどこおったところであり、「うたかた」とは、水面に浮かぶ泡のことである。その水の泡が、一方では消え、一方ではできるように、けっして同じ状態が続いているわけではないという。

 これらを通じて語られているのは、「無常」ということであろう。川の流れのようにすべてのものが絶えず変化しているように、どれも永遠に変わらないものはないことを表している。まさに、「諸行無常」といえる。

 そして『方丈記』は、安元(あんげん)の大火、治承(じしょう)の辻風、福原遷都(ふくはらせんと)へと続くが、それで終わることなく、さらに養和(ようわ)の飢饉、元暦(げんりゃく)の大地震と続いている。

 これら5つの大災害によって、家も財産もすべてが一瞬のうちに失われたことから、この世の中が生きにくいものであり、はかないものであることが明らかにされる。しかし、それは、悲観的なものでは決してない。

 『方丈記』には、生きにくい世の中から、出家し遁世(とんせい)した生活が記されている。そして、ついには一丈四方の部屋での生活に移っていく。一丈は約3メートルであり、一丈四方はおよそ四畳半の広さであろう。

 たとえ、そこに平穏な生活があったとしても、出家し遁世することや一丈四方の部屋で生活することは、無理なことに違いない。無理なことであったにしても、その生き方や考え方には強く深くひかれるものがある。

 最近、そんな思いで周南市を流れる富田川を眺めていると、ある光景が目に入ってきた。それは、ゆく河の流れに浮かぶ無数の泡であった。しかし、その泡は水の泡ではなく、消えていくことのない謎の泡であった。

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