2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

(85)アサギマダラ

再々周南新百景 佐森芳夫(画家)

 10月21日、今年もアサギマダラが飛んできた。昨年と同じ日ではあるが、実際には、この日より8日前の13日に姿を見せていた。しかし、まだフジバカマの花が咲いていなかったからであろうか、すぐに飛び去った。

 その後、姿を見せることがない日が続いていたが、ようやく花が開いたころになって再び飛んできた。しかも、確認できただけでも4頭がいた。それは、正確に情報が伝わっているとしか思えないタイミングである。

 あらゆる情報網が発達した現在の人間であれば、なんの苦労も必要としないであろうが、あの小さなアサギマダラのどこにそれほどの能力があるのか不思議である。そこには、偶然とは言えないものがあるに違いない。

 振り返ってみると、人間は正確に情報を伝えるためにありとあらゆる努力を積み重ねてきた。その成果として携帯電話を手にすることができた。携帯電話があれば、瞬時に情報を受けることも送ることも可能である。

 しかし、アサギマダラは、人間のように何かの助けを借りているわけではない。旅する蝶と言われるように、小さな体ひとつで長い距離を飛ぶことができる。それだけでも、その能力は驚異的というほかないであろう。

 人間の場合には、移動手段をどうするのか、旅の途中の食事はどうするのか、宿泊はどうするのか、さらには着替えにまで気を使わなくてはならない。それ以外にも、休みや費用など最大の問題が待ちかまえている。

 電車に乗っても、街を歩いていても、観光地に行っても、手に携帯電話を持つ人であふれている。いったい何のためにと思いたいほどの普及ぶりである。すでに、社会全体がデジタル化の波に飲み込まれたのであろう。

 それが間違いとは言えないまま、アナログな部分が無駄なものとして切り捨てられているような気がする。10月24日、12頭も飛んできたアサギマダラを見ていると、デジタルではないアナログの親しみが感じられた。

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