コラム・エッセイ
(41)貝殻(かいがら)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
子安貝についての話が「竹取物語」の中に出てくる。子安貝とはタカラガイ科の巻き貝のことで、卵形をした光沢のある美しい殻が特徴である。安産のお守りとしても有名であり、古代には貨幣として使用されていた。
ところが、かぐや姫が求婚する5人の中の一人、中納言石上麻呂(いそのかみのまろ)に対して出した条件は、海の子安貝ではなく燕(ツバメ)が産むという伝説の子安貝であった。
中納言石上麻呂がいくら手を尽くしたところで伝説の子安貝が見つかるはずもなく、ついには捜索中、燕の巣がある高所から転落した後遺症で命を落とすことになる。
求婚者の他の4人が難題を前に偽物で騙そうとしたり偽造や不正を図る中、正直に対応した石上麻呂にとっては不条理と言える結末であったようにさえ思える。
月からの迎えがやって来た時に、すべての謎がさりげなく解き明かされる。かぐや姫が地上に降りてきた本当の理由は、犯した罪をつぐなうためであり、そのつぐないが終わったので迎えに来たという。
かぐや姫が犯した罪が何であったかの説明はないが、人は生まれながらにして何らかの罪を背負っていることに気付かされる。そして生きるということはその罪をつぐなうことなのであろう。
つぐないが終るとお迎えがやってきて天上に帰っていく。その時には、いっさいの抵抗が無力となり、天の羽衣を着せられることによってすべての縁を未練なく断ち切ることができるのである。
伝説の子安貝は当然無理であっても、せめて子安貝の貝殻があればと思い海岸沿いを探してみたが、ついに見つけることはできなかった。
