コラム・エッセイ
(39)バラとアマガエル
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
庭先で咲いているバラの花を、まるで自分一人が手塩にかけて育てあげたかのような思い込みで眺めていると、意外にもバラの花弁の間にニホンアマガエルがいることに気が付いた。
ちょうど深紅のバラの色と黄緑色のアマガエルとの単純な色の組み合わせが新鮮に見えた。それにしても、なぜアマガエルは不安定とも思えるバラの花の中にいるのであろうか。
何かによって運ばれたというより、自らの意思でその場所に移動したことは確かのようであるが、いったいどのようにすればその場所にたどりつくことができるのであろうか。
アマガエルの足に吸盤があることは良く知られたことであったとしても、いつ散るとも分からない繊細なバラの花弁を移動することはかなり危険であり高度な技能が必要とされることは容易に想像できる。
たしかにバラの香りが漂うなかで、バラのやわらかい花びらに包まれて昼寝ができれば最高に違いない。一度は味わってみたいと思う願いを、いとも簡単に達成しているアマガエルがうらやましく思えてくる。
ところが詳しく調べてみると、アマガエルはのん気に昼寝をしてる訳ではなく獲物を狙っていることがわかった。いいかげんな思い込みから生きるために一懸命なカエルに対して、あらぬ嫌疑をかけたことを反省しなければならない。
しばらく目を離したすきに、アマガエルは姿を消していた。近くにいる人間の姿に身の危険を感じたのか、それとも獲物を横取りされると思ったのかその理由は定かではない。
姿を消す前に、アマガエルの皮膚からは毒性の分泌物がでていることをぜひ伝えておくべきであった。
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