コラム・エッセイ
(44)モントブレチア
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
すでに空き家となった実家を管理するために、ときどき田舎に帰っている。特に植物の成長が早い夏の期間には、しばらく間を開けると一面が雑草でおおわれるため注意が必要である。
地域で生活をする人がいる限り、荒れたままの状態を放置する訳にもいかない。それにも関わらず、年齢を重ねるごとに田舎に向かう気力が薄れ、回数も確実に少なくなってきた。
そうした厳しい現実は、今まで幾度となく目にしてきた光景そのもののような気がする。ついに、望んでもいなかったその順番がわが身に振りかかって来たようにさえ思えてならない。
もう一度実家に住んで、荒れた畑を耕し季節の野菜を作りたいという夢を捨てたわけではないが、ひどく害獣に荒らされた畑を目の当たりにすると冷たい現実に引き戻される。
まるで昔話のように、夜ごとに襲ってくる害獣という鬼達に平和な生活を脅かされ続ける生活に耐えられる自信はないし、四方を防御用ネットで囲まれた狭い土地で作るのもつらい。
結局何も進展しないまま、時間だけが過ぎていくのであろう。毎年多くの実をつけていた畑の栗の木が、まるで空き家となったことを悲しむかのように枯れ始めた。
庭の片隅で、鮮やかなオレンジ色のモントブレチアの花が辺りを明るく照らすかのように咲いていた。モントブレチアの和名は、何度聞いても覚えることのできない姫檜扇水仙(ヒメヒオウギスイセン)である。
南アフリカが原産国とは思えないほど寒さにも強く、繁殖力も旺盛である。管理が行きとどかない中でたくましく生き続ける姿勢は、たとえ生態系被害防止外来種であっても学ぶべきかもしれない。
