コラム・エッセイ
(50)夏の夜の夢
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
最近、夢を見ることが少なくなった。実際には夢を見ていないわけではなく、覚えていないだけのことらしいが、いずれにしても、年を取ると夢を見ることが少なくなったと感じるようである。
その反対に、夢であってほしいと思うことは年々多くなってくる。昨年も喪中の知らせが多く届いたが、今年はどうであろうか。同級生や旧友との別れの知らせは、夢であってほしいと思う。
そして今年の夏にも、夢であってほしいと思う出来事があった。新型コロナウイルスの影響で、周南地域のすべての海水浴場が遊泳禁止となった7月の下旬に、その中の一箇所を訪ねた時のことである。
引き潮に現れた長い砂浜を海水浴場の外れに向かって歩いていると、砂の上に転がる不思議な小石が目にとまった。思わず立ち止まって、その小石を拾いあげてみた。
すぐに、その小石が海水浴場にふさわしくないものだと分かり、拾ったことを後悔した。その小石は、かってどこかの廃鉱で見たことのある鉱石か鉱石を製錬する時に出るスラグに良く似たものであった。
さらに周辺には、同じ小石がいくつも転がっていた。小石が天から降ってくるはずもなく、海から流れてくるはずもなく、おそらく、誰かの手で持ち込まれたものに違いないであろう。
小石の正体が何であるのか、いつからこの場所にあるのか、誰が何の目的で持ち込んだものなのかなど、時間が経てば経つほど疑問は増すばかりであった。そして、眠れない夏の夜の夢が続く。
台風が過ぎて、幾分過ごしやすくなった。久し振りに音楽を聴きながら眠りについた。スピーカーからは、フルトヴェングラー指揮のメンデルスゾーン「真夏の夜の夢」序曲が流れている。結論はまだ出ていない。
