コラム・エッセイ
(61)ゴンズイ(権翠)の実
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
再び新型コロナウイルスの感染が、全国的に広がっている。5月の緊急事態の解除後は感染者も減少し防疫が成功したかに思えていたが、経済活動が再開された頃からかなり不安な兆候が続いていた。
さらに、日本人は元来免疫力を持っているとか、インフルエンザ程度なので心配することはないとか、中にはマスクをしても効果がないのでする必要がないなどといった楽観論まで飛び出していた。
これらに同調する動きは、ヨーロッパやアメリカで感染が拡大する危機的な状況にあっても、冬になれば再び感染が広がるといった危惧があっても、立ち止まることがなかったように思える。
すでに感染者数が過去最大を更新して、医療崩壊を招きかねない状況となっているにも関わらず、今が我慢のしどころ、ここ数日間が正念場など何度も同じような言葉が繰り返されるだけである。
報道機関の情報に一喜一憂するしかない毎日であるが、たまには息抜きをしてみたいと思い、すぐ近くの低い山に登ってみた。登山道はないが、目印らしいテープが木の枝に取り付けてあった。
すぐに一抱え以上もある巨木が並んた深い森に入り、落ち葉を踏みながら急斜面を登っていくと、わずか十数分でテレビ塔の建つ山頂に到着した。ご褒美に、国土地理院の四等三角点があった。
展望がほとんど開けていないのが残念であったが、周辺にはクサギの実によく似たゴンズイの実があった。ゴンズイは、魚のゴンズイと同様に役に立たないことが名前の由来とされているが、そんなことはない。
ゴンズイの先を割って、熊野権現の守り札をはさんだ牛王杖(ごおうづえ)を作るという重要な役割を果たしている。
