コラム・エッセイ
(62)トベラ(海桐花)の実
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)新型コロナワクチンに関するニュースが連日のように報じられている。イギリスでは12月8日からワクチンの接種が始まるとか、すでにロシア産ワクチンの接種が首都モスクワで始まったとかである。
ワクチンの効果や安全性などに疑念も指摘されているが、全世界で感染者や死者の数が拡大している現状では期待せざるを得ないのであろう。しかし、過剰な期待や性急な対応は危険である。
たとえ新型コロナワクチンの接種が始まったとしても、この1年間というよりもわずか1年間でここまでに及んだ新型コロナウイルスの影響は、そう簡単に解決するものとは思えない。
毎回、新型コロナウイルスを取り上げるのも気が重たくなるが、避けて通ることはできない問題であればこそ、普段では気づくことのできなかった身近な風景に目を向けてみたいと思う。
トベラは、海岸沿いに自生する常緑の低木であるが、公園や街路樹などにも多く植えられている。臭気があることから節分などにイワシを刺したものを家の扉(とびら)に挟む風習を残すところもある。
その扉がトベラの名前になったとする説もある。春に咲いた白い花は、夏ごろ直径1センチ程度の実を付ける。秋になるとこの実が三方に開いて、中から赤い小さな種のかたまりが顔をだす。
その粘液に包まれた種子は、他の実と比べて決して愛らしいと言えるものではない。人によって受け取り方は違うであろうが、傷口から血が出ているようにも見える。
臭気だけではなくそのグロテスクな姿こそが、魔よけとして使われる理由になっているのかもしれない。
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