2026年10月23日(金)

コラム・エッセイ

(63)セイヨウヒイラギ(西洋柊)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 世界文化遺産のノートルダム大聖堂が炎上したのは、昨年の4月のことであった。パリの中心を流れるセーヌ川に浮かぶシテ島に建っているノートルダム大聖堂は、パリ観光の中心でもあった。

 その惨事を報じた当時の新聞には、燃え上がる炎によって崩れ落ちる大聖堂の尖塔の写真とともに「大半の屋根が焼失し、円天井の一部が崩落」さらに「高さ96メートルの尖塔が焼け落ちた」と書かれていた。

 国際学生証を提示すれば無料で入場することができた時代に、短期間であったが毎日のようにルーブル美術館に通った。その行き帰りに、必ず立ち寄ったのがノートルダム大聖堂であった。

 堂内の高い天井とステンドグラスの窓から差し込む光に包まれると、まるで胎内にいるかのような心の安らぎを感じた。立ち続けであった美術館での足の疲れが、礼拝の椅子に座ることで癒された。

 悲しい記事の中に、聖遺物である「いばらの冠(かんむり)」が無事であったことを見つけた。いばらの冠は、キリストが十字架にかけられる前にかぶせられた冠で、トゲのある植物で編まれていた。

 セイヨウヒイラギは聖なる木とされ、クリスマスの飾りつけに使用されることが多い。これは古くは魔よけであったものが、葉のトゲと赤い実がキリストの冠のいばらと流れた血に結びついたと言われている。

 クリスマスを象徴する赤色と緑色の組み合わせも、このセイヨウヒイラギの葉の色と実の色とされている。また、同じ葉にトゲのある在来種のヒイラギは、実の色が黒紫色となる。

 現在では派手なイルミネーション装飾や各地のイベントとして日本文化に根付いたクリスマスであるが、本来はキリストの生誕(降誕)を祝う日であって、誕生日ではないことも忘れないようにしたい。

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