コラム・エッセイ
(65)お多福南天(オタフクナンテン)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
「南天」は、ナンテンという読み方が「難転」とも表記できるため、「難を転ずる」縁起の良い植物とされている。そのため古い家のそばには必ずと言っていいほど南天の木が植えられていた。
また、冬になると赤い実をつける南天は、枯れ色が目立つ風景のなかで美しく映えるだけではなく、門松(かどまつ)やしめ飾りなどの正月飾りの縁起の良い材料としても多く利用される。
縁起という言葉は、本来は仏教用語の因縁生起(いんねんしょうき)を略したものであるが、事物の起源や由来、または吉凶の前兆などのような別の意味としても使われている。
たとえば吉凶の前兆としては、縁起が良いとか縁起が悪いとかの言葉がある。これらの言葉は、普段の生活の中だけではなく、冠婚葬祭の行事にも欠くことのできない重要なものとなっている。
正月飾りのしめ縄では裏白(うらじろ)や橙(ダイダイ)、ゆずり葉など縁起が良いものが使用される。その中で裏白は、葉の裏が白いことから「清らかな心」を表しているという。
また、橙は実が何年も落ちないまま残っているため一族の代々繁栄を願うものであり、ゆずり葉は新しい葉が伸びたのちに古い葉が落ちることから円満な世代交代を表すものとされている。
これらを、具体的な根拠に乏しい単なる思い込みや語呂合わせとして否定することは容易なことに違いないが、長い歴史の中で培われてきた風俗慣習を決しておろそかにすることはできない。
周南市内の国道2号線沿いには、南天の中でも特に縁起が良いと思われる「お多福南天」の木が多く植えられている。コロナ禍の現在、「難を転じて福となす」縁起の良い場所かもしれない。
