コラム・エッセイ
(68)徳山駅前地区再開発
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
遅ればせながら、再開発される徳山駅前地区を歩いてみた。最近では、年に数回程度しか行くことがなかった場所であるが、いよいよ着工の日が近いのではと聞くと居ても立っても居られなくなった。
これまで、興味がなかったわけでは決してない。再開発の話を聞くたびにぜひ行かなければならないとは思っていたが、まだ大丈夫だろうとの根拠のない安心感から先送りになっていた。
再開発がされる区域は、平成25年(2013)閉店した近鉄松下百貨店があった徳山銀座商店街やみなみ銀座商店街を含む一帯である。広さ1.2ヘクタールには、新たにホテルや分譲マンションが建てられる。
かつては、徳山市の中心商店街として多くの買い物客で賑わっていた時代もあったが、計画が進む現在ではほぼすべての店舗のシャッターが降ろされた寂しい状態になっている。
再開発の地図を片手に、華やかであった当時の様子を思い出しながら、また、やがて消えていく風景を記憶にとどめるにはあまりにも遅すぎたことを反省しながら、区域内を歩き回った。
「店舗移転のお知らせ」や「建築計画のお知らせ」などが掲示されるだけの静まり返った商店街には、時たま早足で通り過ぎる人が見られるだけで、当然のように誰一人訪れる人はいなかった。
共に歩んできたであろう思い出のすべてを、時代の流れとして忘れ去るには余りにも忍びない。しかし、これらの現実を受け入れるためには、新しく生まれ変わる姿に期待するしかないだろう。
線路沿いの街角にさしかかった時、山陽本線を電車が音をたてて通り過ぎていった。その音を聞きながら、すべてが消え去ったときにこそ本当の大切さが分かるのではないかと思った。
