2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(21)日下の石(周南市須金) 

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 「日下」と書いて「ひさげ」と読む。しかし、江戸時代の『防長風土注進案』や『防長地下上申』に「ひさけ」と書かれていることから、かっては「ひさけ」と呼ばれていたと思われる。

 その難解とも言える日下の地名が、すでに品切れのため入手困難となっている『山口県の岩石図鑑』(第一学習社)の中に、徳山市須万日下として記載されていることを偶然見つけた。

 そして、地名以上に驚いたのが、半ページ近くを占めるカラー写真である。黒色貢岩と酸性凝灰岩が互層する緑色の縞模様が見事に写し出されたその美しさに目が釘づけとなった。

 背後に水流らしきものが写されていることから、写真は川べりで撮られたものに違いない。その様子から日下を流れる錦川と倉谷川のうちの、錦川ではないかと思われる。

 さっそく現地に行き、この貴重な岩石を一度目にしたいところであるが、すでに周辺では平瀬ダムの建設工事が進んでいるため関係者以外が立ち入ることが出来なくなっている。

 断念すべきところ、錦川総合開発事務所の職員の案内によって現地に入ることができた。流れが緩やかな倉谷橋の下あたりでは、黒色貢岩が縞模様を描く表面が滑らかな岩石が多く見られた。

 ところが、いくら探しても図鑑の写真と同じ色合いを持つ縞模様の岩が見つからない。もしかしたら印刷の出来具合が原因だったのかもしれないとの疑念が生じる中で、ついに時間切れとなった。

 持ち帰った石を洗ってみても、疑念を晴らすことはできなかった。ダムが完成すると、付近一帯は湖底に沈む。残された時間が、あまりにも少な過ぎる。

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