2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(28)菜の花(周南市福川2丁目) 

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 柿本人麻呂は万葉集の歌人として広く知られているが、その生涯については謎とされている。島根県益田市の沖合にあった鴨島で死没したという伝説が残されているが、定かではない。

 また、官位が低かったとされる人麻呂が、益田市の高津柿本神社でなぜ神様として祀られるようになったかも不明である。さらに、火灘消除や疫病防除などの神として信仰されるに至った経過も明らかではない。

 それにも関わらず、人麿様や人丸様などとして柿本人麻呂信仰が各地に広がっていったのは、石見を中心とする採鉱や木地屋、造紙などの技術を持った集団の役割が大きかったと思われる。

 その柿本人麻呂社が、JR福川駅から北に伸びる福川停車場線の道路沿いに祀られている。最近、周辺が整備され、人麻呂社は以前より道路から離れた奥側の広い場所に移動した。

 新設された説明板には、社が創建された理由や経過、行事記録などが詳しく書かれている。この東町で疫病が流行した時に、市井木から以前疫病防除のために建てられた祠を譲り受けたとされている。

 市井木では、天保7年(1836)の大飢饉の後に疫病が流行し多くの人が死亡したという。12弁菊紋がある祠には、「天保9年3月15日、市井木 東町」の文字が刻まれている。

 疫病とは伝染病のことで、江戸時代には天然痘(疱瘡)、麻疹(はしか)、コレラ(コロリ)などの流行があった。当時流行した疫病が何であったかは不明であるが、多くの死者が出たことは確かであろう。

 菜の花には、小さな幸せ、元気いっぱいなどの花言葉がある。新型コロナウイルスが一日も早く終息し、安寧が訪れることを祈りたい。

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