2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(76)カワウ(河鵜)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 偶然通りかかった河口近くで、奇妙な光景を目にした。それは一羽の鳥が、中州の地面で羽を大きく広げているところであった。長くは続かなかったが、それでも同じ動作を何度も繰り返していた。

 辺りに同類の鳥がいないことから、求愛行動や威嚇ではないことは確かのようであったが、いったい何をしているのかが気になった。急ぐ用事もないので、しばらくの間その様子を眺めることにした。

 まず鳥をじっくり観察してみると、最初その姿形から予想していたカワウとは違っていることが分かった。カワウといえば全身が黒色のイメージが強いが、その鳥は首から上が白くなっていた。

 後で調べたところ、鳥の正体は何と繁殖期のカワウであった。カワウは、山間部で見られる「カワウ駆除中」の赤いのぼりが表しているように水産資源を荒らす害鳥としての悪いイメージが定着している。

 そのこともあり、川で見かけると密猟を目撃したような気分になるなど、カワウを野鳥観察の対象にすることがなかったので、繁殖期に結婚色と言われる羽の色が白く変わることなど知る由もない。

 また、カワウは潜水することを最優先するあまり、他の鳥のように羽の撥水手入れをしないらしい。水に濡れた重たい体で飛ぶことを避けるために、日光浴をして体を乾かしていると言われている。

 ただ、カワウの足には水かきがあるので、地面に立つのがどうやら苦手らしい。仁王立ちが続かなかったのもこれが原因であるとすれば、すべての謎が解けたような気がする。

 より身近に感じられるようになったカワウを、あらためてよく見れば黒一色と思われていた羽にも美しい模様があり、エメラルドグリーンに輝く目の虹彩(こうさい)も愛らしいと思えるようになってきた。

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