2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(81)スイバ(酸葉) 

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 なつかしい味がした。畑のそばに生えている野草の葉っぱを引きちぎり、口に入れて噛みくだくと、口いっぱいに酸っぱさが広がった。それは、子どものころを思い出させる味であった。

 その味が特別好きであったとは言えない気がするが、けっして嫌いではなかったはずである。学校の行き帰りに、この葉っぱを見つけては食べていたような記憶が今でも残っている。

 そのせいもあってか、この葉っぱを見ると「道草を食う」という言葉を思い浮かべる。「道草を食う」の語源は、馬が道端の草を食べながら行くのでなかなか進まないこととされている。

 記憶の中の登下校は、まさに「道草を食う」と同じようになかなか進まなかったような気がする。豊かな自然があって、交通事故の心配もほとんどなかった良き時代の良き風景でもあった。

 不思議なのは、葉っぱを食べることができるとか、口に入れても害がないとかを誰にも教わった記憶がないことである。おそらくは、遊びのなかで年上の子供から自然に伝わっていたのであろうが。

 葉っぱを噛んだ時の酸っぱさから、勝手にスイバと呼んでいた。後になって、それが正式な名前と知って驚いた。方言の「すいい」や「すいー」が共通語の「酸(す)い」に近かったためと思われる。

 最近、スイバがヨーロッパではハーブとしてサラダなどに利用されていることを本で読んだ。ハーブの「ソレル」という名称には、スイバにはない華やかさがあるように感じる。

 スイバを道草としてではなく、ハーブとして食べていたとすれば、また違った思い出となったであろう。いつか、園芸店でフレンチソレルの苗を見つけたら、買い求めて栽培をしてみたい。

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