コラム・エッセイ
(16)鶴柿(周南市八代)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
本州唯一のナベヅルの越冬地である周南市八代には、ツルと里の人たちとの温かい交流を伝える話がいくつも残されている。そのなかの一つに『日本の民話』(未来社)などの「鶴柿」がある。
鶴が渡来する時期には、八代盆地の田んぼや畑だけではなく周辺の山々も冬枯れの色となる。そのなかで赤い柿の実は特に目立つ。
子鶴がその赤く熟した柿を欲しがった。親鶴は柿の実を取ろうとしたが、大きな体では細い枝に止まることができない。仕方なく木の下に舞い降りて、実を食べていたカラスに分けてもらうよう頼んだ。
ところがカラスは、何度頼んでも食べカスや食べられないヘタを落とすだけで、実を落としてくれない。その様子を見かねた里の人が、意地悪いカラスを追い払い熟した実を取って鶴に与えた。
それからしばらく経ったある日、里の人の子供が干柿の種をのどに詰まらせて苦しんでいると、何処からともなく鶴が現れて長いくちばしでのどに詰まった種を取り出してくれた。
鶴の恩返しがあってから、八代では柿の種が干柿にすると消えて無くなるようになったという。のどに詰まらせる心配がなくなった柿を、鶴の恩返しから鶴柿と呼ぶようになったと伝えられている。
今年はナベヅルの渡来が遅れ、ついに最も遅い記録となった。現在数12羽(放鳥5羽)の八代盆地を訪ね、鶴監視所から給餌田の親子3羽を見学したあとで、鶴柿の木を捜し歩いた。
持ち主である地元の人に案内された場所には、たわわに実った一本の鶴柿の木があった。そこで初めて鶴柿が、他の渋柿とは違う種類のものであることを知ることができた。
