2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(93)イヌホオズキ(犬酸漿)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 奇妙な草を見つけた。山道を歩いている途中で偶然に目に映ったのは、余りにも無残な姿をさらけ出している傷だらけの草であった。どうしたのかが気にかかり、思わず足を止めてみた。

 異様に見えたのは、どうやら虫に食われたイヌホオズキの葉のようであった。葉の裏側をのぞいてみると、多くの空いた穴から洩れる光の中にセミの抜け殻が影のように浮かんでいた。

 偶然かどうかは分からないが、抜け殻は虫に食われた穴に手足を引っかけるようにして固まっていた。まさか、土の中から出てきたばかりのセミにこの場所があることを予測できたとは思えないが。

 葉の裏側で逆さまになりながら脱皮することは、通常であっても決してたやすいことではないはずである。何かの虫が葉を食べることによって、その手助けをしていたとすればこれほど感動的な話はないであろう。

 まさかそんなことなどあろうはずがなく、偶然の一致に違いない。取りあえず、葉が穴あき状態になった原因を探すことにしたが、葉の表側にはそれらしい手がかりを見つけることはできなかった。

 しかし、葉を裏返してみると、葉の片隅に小さな毛虫のような虫が隠れていた。それは見覚えのあるトゲだらけのてんとう虫の幼虫であったが、てんとう虫の成虫の姿はどこにも見られなかった。

 おそらく、この葉を食べていたのは28個の斑点をつけたニジュウヤホシテントウであろう。いろいろな種類がいるてんとう虫の中でも、ナス科の葉などを好んで食べる憎き害虫の一つである。

 これらの害虫は駆除の対象とすべきであるが、中には7個の斑点をつけたナナホシテントウのように、害虫のアブラムシを退治してくれる愛すべき益虫もいるので注意が必要である。

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