コラム・エッセイ
(85)紅花(ベニバナ)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
紅花の花が咲いている。オレンジの派手な色合いの花が咲いているのは、もうじき咲き終えようとしているアザミの花の近くであったが、それにしても、この花は梅雨の曇り空が似合わない。
なぜか灼熱の太陽が似合うと思っていたら、原産地がアフリカであることを知って妙に納得した。意外であったのは、すでに5、6世紀の古墳時代には日本に伝わっていたことであろう。
最近まで、食用油が売られていること以外はほとんど知ることもなかった紅花を、改めて知るきっかけになったのは、暦の七十二候の中に「紅花栄(べにばなさかう)」と記されていたからである。
七十二候で、桃、桜、牡丹、菖蒲などと共に季節の変わり目の花として取り上げられているほど有名であるにも関わらず、気づくことがなかったのは、まさに一生の不覚と言えるであろう。
今さらながら、これまでの浅学を挽回すべく紅花について調べてみると、紅花の花弁からつくられる染料が、長い歴史の中でいかに重要な役割を果たしてきたかを知ることができた。
黄色からオレンジ色、そして赤色に変化して咲く紅花の花が、黄色と紅色の2種類の染めができることや、黄色に染めるよりも紅色に染める方が高度な技術力を必要としたことなど挙げればきりがない。
高貴な人だけしか着ることが許されない時代があったように、まさに紅染めは高級で貴重なものとして取り扱われ続けてきたのである。妖艶な雰囲気を漂わせる口紅もその一つであったと言える。
近年では、輸入品や化学製品の普及によって衰退の一途をたどり、かって一世を風靡した勇姿をうかがい知ることはできなくなったが、時にはゆっくりと、紅花の長い歴史に思いをはせるのも良いと思う。
