コラム・エッセイ
(87)グイメ(グミ)の実
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
ごく最近まで、「グイメ」が方言であることを知らなかった。しかし、今さら子どもの頃から慣れ親しんだ「グイメ」という名前が、方言であることを知ったところで何かの役に立つとは思えない。
それだけでなく、標準語である「グミ」という名前が果汁をゼラチンで固めた菓子と同じ名前であることから、いくら菓子のグミとは関係ないと言われたとしても、どうしても馴染めないでいる。
それは、菓子を買うことができなかった子どもの頃に、オヤツ代わりとして食べていたグイメの実に対して、決して忘れることができない懐かしい気持ちを持ち続けているからなのだろうか。
食べて特に美味しいとは思わなかったような気もするが、それは熟す前のものを食べ急いでいたのが原因だったのかもしれない。それだけグイメの実をめぐる競争は激しかったとも言える。
グイメの実が熟すのを虎視眈々と狙っていたのは、オヤツに飢えた子どもたちだけではなかった。空からも野鳥の群れが狙っていたとすれば、多少の渋みに二の足を踏むほどの余裕があろうはずがない。
痛めていた腰の調子が良くなったので、久しぶりに田舎に帰ることができた。植物の成長がいちじるしいこの時期に、2カ月以上の間を空けた結果がどうなるかは容易に想像できる。
案の定、予想に違わず家の周辺は多くの草でおおわれていた。さっそく、草刈りの準備を進めていると、庭先に植えられたビックリグイメの木の枝が赤い実で大きくたわんでいるのが見えた。
すぐに近寄ってみると、赤い実はまるで帰りを待ちわびていたかのように完熟していた。そのグイメの実を口に入れると、決してグミではないグイメの懐かしい味がした。
