コラム・エッセイ
(10)茶の花(周南市夜市)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
的場川に架かる上畑橋を渡り、集落の中を抜ける坂道を登る。次第に高度が上がり、県道180号串・夜市線が遠ざかっていく。途中で、急な坂道の先を歩いていた高齢の女性に追いついた。
「豊後石」について尋ねてみたが、「知らない」との予想外の返事が返ってきた。さらに進み、畑で作業中の高齢の女性にも声をかけてみたが、やはり同じ返事であった。
現地に行けば簡単にわかると、たかをくくっていたのが大きな失敗であった。ここから先には民家らしいものはなく、自力で探す以外にない。しばらく進むと分かれ道に出合い、正面に白い杭が見えた。
近寄ってみると、案の定、豊後石の標識であった。すでに下の部分が腐って斜面に倒れかかっている。おそらく草が刈られる前であれば、見付けることができなかったに違いない。
三叉路を右の桑迫農業団地の車道に入り、整備された畑地のそばの坂道を登る。やがて、山の尾根近くにまで進んだところで、幸運にも農作業中の男性から、すぐそばの高台を教えてもらった。
道を歩いていただけでは分かるはずもない場所に「豊後石(夫婦岩)」の説明板が立っていた。ところが、目の前には茶の木などが茂っているだけで豊後石らしきものが見当たらない。
恐る恐る茶の木の藪を探ると、中から岩肌が現れた。説明板に「周囲の石とは石質が全くちがう」と記されているように、はっきりと石質が確認できた訳ではないが、この石が豊後石に間違いなかったであろう。
今回は、残念ながら豊後から飛んできたと伝えられている石の全体像を見ることはできなかった。それでも、豊後石を覆い尽くした茶の木が、多くの白い清楚な花を咲かせていた。
