コラム・エッセイ
(12)レモン(檸檬)(下松市笠戸島)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
いつもは、座席指定にして使用時間を制限してほしいと思うほど混み合っているロビーの窓際の席が、この日は運良く空いていた。すぐに、700系新幹線のグリーン車席に腰を下ろす。
C17編成の8号車として使用されていた広くゆったりとしたシートが体を包み込む。正面の広い窓の向こうに島と海との風景が広がり、そのすばらしさに圧倒される。
目の前には国民宿舎大城が建つ大城岬が、午後の日ざしに宝石を散りばめたように輝く海面に突き出ている。ドックに入港する船が2隻のタグボートに引かれゆっくりと通り過ぎて行く。
青い空を背景にした小深浦山から高壺山へと続く山並みが、さらに尻高山へと伸びてカツネ崎で海に入り込む。その隣には古島が浮かび、遠くに野島の連なりが見えている。
一艘のボートが、はるか沖合いから笠戸湾に入ってきた。その長い引き波を追い続けていると、ずいぶんと時間が過ぎたような気がした。心残りを振り払い、思い切って席を立った。
そして、ロビー内にある地元の特産品などを陳列した売店で、来巻産のニンニクを使用したにんにく味噌と生野屋の蜂蜜、大城磯もなかとともに、今回一番の目当であった笠戸島産のレモンを買った。
収穫が始まったばかりのレモンの実は、新鮮な「青いレモン」の色をしている。黄色のイメージが強いレモンであるが、この時季ならではの青いレモンをぜひ味わいたい。
特に肉厚の皮は、そのまま食べることがおすすめである。コリコリとした食感と上品な酸味を味わうことができるのも、安心の笠戸島産の強みであり魅力でもある。
