コラム・エッセイ
(59)クサギ(臭木)の実
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)秋の野山で、クサギの実が異彩を放っている。時には、赤と黒の鮮やかな色合いから、花が咲いているように見間違えられることもあるが、本当の花は7月から9月ごろにかけて咲く。
クサギはどこでも見かける身近な落葉低木でありながら、関心を持たれることがほとんどない。その理由は、臭木(クサギ)という名前の由来となった葉や枝を切った時にでる臭いにおいにあると思われる。
そのにおいは、悪臭とまで言えないが、決して万人に好まれるものではない。しかしその一方で、紅紫色の萼(がく)から伸びるつぼみが5枚の細長い花弁として平開すると、辺り一帯に芳香が漂う。
芳香と異臭を併せ持つクサギは、知れば知るほど能力を秘めていることが分かる。若葉はにおいやアクを抜くことで山菜として利用され、また煎じて飲むことで高血圧などの漢方薬として活用されてきた。
さらに、クサギには殺菌効果があるとされるなど、その貴重性はぞんざいに扱われているにも関わらず絶大である。特に注目したいのは、クサギの実が染色の原料として使用されていることであろう。
染め上がった色合いは、熟した実の黒い色には似つかわしくないほど魅力に満ちた青色となる。しかもクサギ染めには、色落ちを防ぐための媒染剤(ばいせんざい)が不要と言われている。
かなり簡単と思われる染色に心を奪われるが、材料の実やガクの採集には苦労が予想される。染めに必要な量ともなれば、大変に違いない。販売もされているらしいが、自らの手で集めたいと思う。
冷凍保存が可能なので、来年もあるといった気楽な気分で集めていると、実を好物にしている競争相手の野鳥にも出会えるはずである。
