コラム・エッセイ
(60)ラディッシュ(はつか大根)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
ある日を境に、あれほど暴れまくっていた野獣がまったく姿を見せなくなった。来なければ来ないに越したことはないが、来ないなりにいつ来るのかといった不安がより増すことになる。
ある日散歩の途中で、近くの畑の中に「はこわな」一基が仕掛けられているのを発見した。鉄製の箱罠には、両端に扉があり、野獣が中に入ると扉が自動的に落ちて捕獲する仕組みになっている。
罠が設置された畑は周囲を獣除けのトタン板で囲まれてはいるものの、最近耕作された様子がみられないほど雑草が生い茂り、至る所に野獣によって踏み荒らされた跡が残されていた。
この罠で野獣が捕獲されたかどうかは不明であったが、仕掛けられた罠の効果によって家の近くに野獣が現れなくなったことは明らかである。箱罠と設置者に感謝しなければならない。
以前、夜間に点滅する照明灯を設置したが、うたい文句に反してまったく効果がなかったことがある。野獣が持っている危険を回避する能力の高さを決してあなどることはできない。
そんな中、久しぶりに二十日大根の収穫があった。二十日大根は、その名前の通り種まきからおおよそ一か月で収穫できる。野獣の被害に遭わなかった期間を表しているような名前がうれしい。
その純和風的な名前から日本古来の野菜と思われがちであるが、意外にも原産地はヨーロッパである。明治時代に日本に伝わったとされ、今回植えた「赤丸」の袋にも生産地がイタリアと書かれていた。
それを知れば、二十日大根よりもラディッシュの名前の方がふさわしいように思えてくる。この際、イタリアに行ったつもりでラディッシュを味わうのも良いかもしれない。
