コラム・エッセイ
(89)サンショウの実
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
偶然、山椒の枝に実がついているところを見つけた。葉の色に紛れて見えなかったに違いないが、よく見ると驚くほど多くの実がついている。どうやら今年は、山椒の当たり年のようである。
普段は見向きもしない山椒の実であるが、この時、ふと「山椒は小粒でもぴりりと辛い」そんな言葉が浮かんだ。ためしに一粒取って口に入れてみると、心地よい香りがして馴染みのある味が広がった。
しかし、次の瞬間、激しい刺激に襲われた。まるで火傷でもしたかのように、舌の先がしびれている。経験をしたことがあるわけではないが、毒に当たるとこのような状態になるのかも知れない。
よくも、先人たちはこんなものを口にする勇気があったものだと感心する。ともかく安心して口にすることができることに感謝しながら、山椒の実を有効に利用する方法を考えた。
今までは、新芽を押し寿司などの香料に利用することはあっても、実を利用することはなかったような気がする。取りあえず、実の収穫に取りかかると、予想だしなかった事態が待ち受けていた。
「痛い」思わず声が出た。山椒の実を取ろうとして伸ばした指先に激痛が走る。よく見ると葉に隠れるようにして枝のいたるところにトゲが生えている。そのトゲの鋭さが、手袋を簡単に貫通させる。
慎重に作業を進めていくが、枝先から根元にまで張り巡らされたトゲの攻撃が緩まることは決してない。悪戦苦闘の結果、秋に収穫するための半分を残して、何とか作業を終えることができた。
収穫した実は、ゴミや枝などを丁寧に取り除き、中火で茹で、水にさらしてアクを取ると下ごしらえが完成する。小分けにして冷凍保存すると、必要に応じて使用することができる。
