コラム・エッセイ
(98)葡萄(ぶどう)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
秋になると、なぜか旅に出たくなる。暑い夏が終わり、涼しい風が吹くようになってくると体力とともに気力も回復してくるからであろうか。また、増してきた食欲が、旅への欲求を一段と強くする。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、旅だけでなく外出すら自粛しなければならない状況が長く続いている。国内旅行どころか、海外旅行など夢の夢であろう。自由に旅ができる日が待ち遠しい。
そんな中、地元、須金産のニューピオーネを味わいながら、若いころに訪れたパリ市内のブドウ畑のことを思い出した。いまほど、情報を簡単に手に入れることができなかった時代のことである。
憧れのパリは、エッフェル塔やルーブル美術館、凱旋門など魅力ある観光名所であふれていたが、それよりも多くの芸術家たちが生活したことのあるモンマルトル周辺を歩き回ることに夢中になった。
そんなある日、ユトリロの風景画に何度も登場する居酒屋「ラパン・アジル」を探している時に、偶然、隣にあるブドウ畑を見つけた。ブドウ畑は鉄製の柵で囲まれた狭い急斜面に作られていた。
園内のブドウは、日本で多く見られるようなトンネル状の棚仕立てではなく、ブドウの樹を垂直に立てた垣根仕立てであった。それは生食用としてではなく、ワイン用として栽培しているからであろう。
このブドウ畑は20世紀になって復活したもので、かつて農村地帯にあったブドウ畑は地域開発によって完全に消えたと言われている。毎年10月には、モンマルトルでブドウ収穫祭が行われる。
一日も早くコロナ禍が収束し、古き良き時代の面影を残すモンマルトル周辺を、再度歩ける日が来ることに期待したい。そして、モンマルトルのブドウ収穫祭に参加することを夢見よう。
