コラム・エッセイ
(54)カラスウリ(烏瓜)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
夜陰にまぎれて、奴らがやって来る。気配を察した隣家の犬が激しく吠えたてるが、いっこうに動じる様子はない。何かに似た鳴き声を発しながら、あたり一帯を荒らしまくる。
玄関からわずか数メートルも離れていない場所で繰り広げられる騒動は、今年に限ったことではないが、家に近づく距離や回数など年々エスカレートしているように思えてならない。
すでに、野生動物にも生きる権利があると愛護家を気取っていられるほど余裕のある状態ではない。用心しすぎかもしれないが、安全のため夜間の外出をできるだけ控えるようにしている。
奴らが去った後には、掘り返された跡と反動で落ちた土砂があたり一面に広がっている。当然のように、後始末をする役割が家人にまわってくる。奴らが来るたびに、その繰り返しである。
ある日、行き場のない怒りを募らせながら現場に立っていると、近くの枝にぶら下がっているカラスウリの赤い実を見つけた。それがまるで募る怒りをなだめてくれたような気がした。
一瞬、犯人が掃除のお礼に残してくれたものではないかと思ったが、そんな嘘のような美談があるはずもなく、赤いカラスウリの実は苦くて食べられないことを図鑑で知った。
カラスウリの名前の由来についても、怪しいところがある。カラスが好んで食べるとされているカラスウリであるが、今まで一度もカラスが食べているところを見たことがない。
いずれにしても、子孫を増やせる絶好の時期に、カラスウリがなぜわざわざ苦くして食べられないようにしているのかが疑問である。
