コラム・エッセイ
(53)稲穂(ヒノヒカリ)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)届いたハガキには、大会中止の知らせが書かれていた。ついに、11月に長門市で開催予定であった山口県地方史学会の研究大会までもが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になった。
Go To トラベル キャンペーンが始まるなど経済活動も再開されてはいるものの、感染の危険が無くなったわけではない。多くの人が集まる集会ともなればより慎重な対応が必要なのは当然かもしれない。
残念ではあるが、次回の大会が無事に開催されることを願うしかない。それよりも、新型コロナウイルスのニュースが大きく扱われている一方で、深刻な米の害虫被害の報道が少ないことの方が心配である。
東南アジアや中国から飛来したトビイロウンカが大量発生し、稲を各地で枯らしている。報道によるとその被害はここ10年間で最大と言われ、円形に広がった惨状は目を覆いたくなるほどである。
そうした中、ある場所に「ウンカ様」と呼ばれる神が祀られていることを耳にした。ウンカ退散を祈願したものであれば非常にめずらしいと言えるが、確証が得られる資料を見つけることはできなかった。
やむなく、伝え聞いている場所を訪ねてみると、急な石段を登った山の斜面に天王様の石祠があり、付近に御幣(ごへい)が結ばれた細い樹木があった。それが「ウンカ様」と伝えられているものに違いない。
しかし、御神体があるわけではなく、確証となるものは何も見つけられなかった。これらが天王様とウンカ様であることを証明できるものは、現在も管理を続けている地域住民の口伝だけになっている。
かっては田園地帯であったのどかな地域も、宅地開発が進みつつある。やがて、田んぼとともに口伝が消える日も近いのかもしれない。
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