2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(19)とっくり大根(周南市羽島)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 夜市川に架かる御姫橋を渡り羽島方面に向かって進むと、周辺を老人保健施設や住宅に囲まれた狭い田んぼの片隅に小さな祠がある。新南陽市の『生活と祈り』によると「いかと様」と呼ばれたもので、詳細については不明とされている。

 古くから住んでいる人の話によると、この小祠を「いかと石さま」と呼んでいたと言い、その理由はかってこの辺りが海の中にあったころにイカが集まる瀬があったからではないかとのことであった。

 小祠が建っている場所を調べてみると、岩礁であったと思われるものを確認することができた。開作が行われる三百年以上も前のものが、今もこの様にして残されていることは非常に貴重である。

 同じように、羽島で長い歴史を残すものとして、とっくり大根をあげることができる。とっくり大根は、その名前が表すように、とっくりに似た大根のことで、「細く高く、口のすぼんだ器」(広辞苑)の形をしている。

 頂いた大根を実測してみると、チョコ口にあたる首の部分が長さ1センチ、直径1.8センチ、胴にあたる本体部分が長さ13.2センチ、直径7.8センチ、根の長さが14.5センチとまさに文字通りの数値であった。

 12月から1月にかけて収穫された大根は、天日干しにされた後に漬け込まれ9月頃に「とっくり沢庵」としてスーパーマーケットなどで販売される。歯切れの良い食感などが、人気を集めている。

 とっくり大根は山口県の伝統野菜として貴重な品種であるが、生産者の高齢化や後継者不足など多くの課題に直面している。これらの苦難を乗り越えて、末永く生産が続くことを願わずにはいられない。

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