2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(4)荒地盗人萩(あれちぬすびとはぎ)(下松市西豊井)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 「星の塔」からの眺めは、すばらしい。下松公園(海のみえる公園)に建てられた時報塔を兼ねた星の塔の展望台からは、360度の展望を楽しむことができる。

 南側には、笠戸湾の絶景が広がる。視界の左手には工場の大きな屋根の向こうに赤い笠戸大橋と笠戸島が横たわり、右手にはビル群の先に周南市の大島が重なって見える。

 西側には、商業施設やマンション、民家が建ち並ぶ下松の市街地が広がっている。その後ろには、石油コンビナートの高い煙突から流れる煙と岩熊山や嶽山、四熊岳の連なりが見える。

 北側には、近くの新興住宅地の家並みと遠くの高い山並みがあり、東側には旗岡団地のアパート群が木々に隠れながら見えている。旗岡山の横には、遠く祝島が浮かんでいる。

 これらの風景の中には、松の木に星が降りて七日七夜光輝いたという下松の地名の由来となった場所や末武城山やその近くの白坂山古戦場、太平洋戦争の遺跡など多くの歴史が含まれている。

 古い歴史に思いをはせる絶好の場所とも言える「星の塔」周辺には、淡紅色の小さな可憐な花が一面に咲いていた。その花の名前はアレチヌスビトハギで、漢字では荒地盗人萩と書く。

 盗人とは可憐で清楚な花には似合わない、何んとも哀れな名前である。がしかし、花が終り種が実るころになると、名前の由来にもなっている別の姿を知ることになる。

 その一つが、盗人の足跡にも似た不思議な実の形であり、雑草地や野原を歩くと服やズボンにこっそりと実を引っ付ける盗人のようなだましのテクニックであろう。

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