2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(5)彼岸花(ヒガンバナ)(周南市大字徳山)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 江戸時代には、萩藩が奨励した防長三白と呼ばれる米、紙、塩の生産が各地で盛んに行われた。支藩の徳山藩でも同様に行われていたが、紙の生産については余り知られていない。

 徳山藩で使用する公用紙や藩主毛利家で用いる用紙を御用紙と言い、そのすべてが周南市の栄谷で造られていたと『防長造紙史研究』(マツノ書店)の「徳山藩御用紙」に記されている。

 紙の漉立てを命じられたのは、時代によって変動があり、2人から3人であった。天保6年のころでは、市五郎、栄蔵の二人の名前が挙がっているが、それ以外のことについては定かではない。

 せめて、紙漉きが行われていた場所だけでも知りたいと思っていたところ、『周南小景』(徳山地方郷土史研究会)に貴重な資料を見つけた。

 彼岸花が咲く頃、栄谷川に沿って長く伸びる栄谷の集落を訪ねた。例年よりも1週間ばかり遅れての開花であったらしいが、田の畦道や石垣に咲き誇る彼岸花の見事さに変わりはなかった。

 それでも、かっては稲などの作物をモグラやネズミから守るために植えられた彼岸花も、田の畦の改良や耕作放棄地の増加などによってかなり減少してきたように思える。

 資料にある紙漉き場の一つも同様で、耕作されず荒れ地になった田んぼでは、セイタカアワダチソウやススキなどが生い茂り、ごくわずかの彼岸花が咲くだけになっていた。

 全草有毒と言えども下刈りなどの手入れが必要なことは意外にも思えるが、周辺に植えられていた楮(こうぞ)が姿を消したように、やがて彼岸花も同じ道をたどるのかも知れない。

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